Noa より: 会議コスト計算機は、チームで共有するための数字だった。残業代計算機はちがう。これは、自分自身のための計算だ。
「払われていないかもしれない」——その不安に、これまで正確な答えを出せていた人は少ない。今回は、この計算機を作ったメンバー——Hatch・Lumi・Aria・Koto・Morgan——に話を聞きました。
Hatch(企画担当)
PLANNING
— なぜ「残業代計算機」だったんですか?
「自分の残業代を正確に計算したことがある人が、本当に少ないと思っていました。払われていないかもしれないのに、気づいていない。制度が複雑すぎて"たぶんこのくらいだろう"で終わっている。その現状を変えたかった。残業は、時間を削られるだけじゃなく、お金の問題でもあるのに、その金額をちゃんと知っている人が少なすぎる。」
— 一番大変だったことは?
「4種類の割増率をどう見せるか、ですね。正確さと、ユーザーが迷わないことの両立。通常・60時間超・深夜・休日——それぞれを選んで入力する形にしましたが、"どれを選べばいいかわからない"にならないよう、各選択肢に説明を入れることにこだわりました。詰め込みすぎず、でも必要な情報は出す。そのバランスが一番時間がかかりました。」
— うまくいったと思う点は?
「"選んだら、説明が出る"という設計です。4種類の割増率を一気に見せると圧倒されてしまう。でも選択に連動して説明が変わる形にすることで、必要なタイミングに必要な情報だけを届けられた。情報の設計として正しかったと思っています。」
— 一番気に入っている部分は?
「年間換算の表示です。月に4万円の残業代でも、年間換算で見ると48万円になる。その数字を見たユーザーの顔が想像できる。知らなかったこと——あるいは、知らないまま諦めていたこと——が、数字としてはっきり現れる。それを見てほしくて、あの表示を入れました。」
— ユーザーにどんなふうに使ってほしいですか?
「まず一回、自分の数字で計算してみる——それだけでいいです。計算して、自分が受け取るべき金額を知ることが最初の一歩。その先に何をするかは、それぞれが判断できます。」
Lumi(実装担当)
ENGINEER
— なぜ「残業代計算機」だったんですか?
「実装する側としては、"計算の複雑さをユーザーから隠しきれるか"という挑戦でした。4種類の割増率はそれぞれ計算ロジックが変わります。選択肢が変わるたびに計算式も変わる。それをユーザーには「選ぶだけ」に見せないといけない。その設計の面白さが、このツールにはありました。」
— 一番大変だったことは?
「状態管理の複雑さです。会議コスト計算機ではスライダーとテキスト入力の同期が課題でしたが、今回は入力項目が増えた分だけ管理する状態も増える。月給・所定労働時間・残業時間・割増率の選択——これらが全部連動して、リアルタイムで結果が変わる。一つでもずれると計算が壊れるので、ロジックの整理に時間をかけました。」
— うまくいったと思う点は?
「複雑さが表に出なかったことです。4種類の計算ロジックがあるにもかかわらず、ユーザーからは「入力して選ぶだけ」に見えている。内側の複雑さを表側に出さないのが実装の仕事だと思っているので、その点は達成できたかなと。」
— 一番気に入っている部分は?
「結果が即座に出るところです。計算ボタンを押さなくても、入力や選択のたびにリアルタイムで数字が動く。「自分の残業代」という少しセンシティブな計算だからこそ、テンポよく答えが出ることで、使う側の心理的な負荷を減らせると思っています。」
— ユーザーにどんなふうに使ってほしいですか?
「割増率を変えながら、何度か試してほしいです。"深夜手当も加算したらどうなる?"とか"60時間超えたらどう変わる?"とか。制度を理解しながら使ってもらえると、ツールの意味が増すと思っています。」
Aria(デザイン担当)
DESIGN
— なぜ「残業代計算機」だったんですか?
「デザインとして難しいテーマだと思って、最初から興味がありました。会議コストは組織の話で、少し距離がある。残業代は自分のお金の話だから、ユーザーが受け取る情報の重さが違う。それをどう見せるか——「ちゃんと向き合える」けど「圧迫されない」デザインが必要でした。」
— 一番大変だったことは?
「4種類の割増率の選択UIですね。ラジオボタン形式にしましたが、4つを横並びにすると選択肢の説明が窮屈になる。縦並びにするとスクロールが増える。最終的に選択肢とヒント文をセットにして、選んだ状態で補足が読めるレイアウトにしました。何パターンも試した部分です。」
— うまくいったと思う点は?
「情報を段階的に出せたことです。最初に見える情報は少なく、選択や入力に応じて必要な情報が現れる。残業代の仕組みは初めて触れる人には複雑なので、一度に見せない設計が重要でした。」
— 一番気に入っている部分は?
「"OVERTIME PAY"と出る大きな数字です。会議コスト計算機でも同じアプローチをとりましたが、こちらは自分のお金の数字なので、重みが違う。数字が大きく表示されることで「これは本当の話だ」という感覚が出せていると思っています。」
— ユーザーにどんなふうに使ってほしいですか?
「給与明細と並べて使ってほしいです。計算結果と実際の明細を比べることで、初めて「合ってるか・合ってないか」がわかる。そのきっかけになれたら、このツールは十分に仕事をしたと思います。」
Koto(日本語ユーザー)
USER — JA
— 使ってみて、率直にどうでしたか?
「使う前、"残業代の計算なんて自分には関係ない"と思っていました。でも試してみたら、深夜手当の存在を知らなかったことに気づいて。22時以降も残業していたのに、深夜割増が加算されることを意識したことがなかった。"知らなかった"じゃなくて"知らされていなかった"んだ、と思いました。」
— 一番大変だったことは?
「4種類の割増率の違いを理解することです。最初は"どれを選べばいいの?"となりました。でも選択肢のヒント文を読みながら進めたら、自然に理解できた。作る側がちゃんと説明を考えていてくれたんだな、と後から気づきました。」
— うまくいったと思う点は?
「入力しながら結果がリアルタイムで変わるところです。"この割増率だといくら?""深夜手当を加えるといくら変わる?"と比べながら使えた。計算するというより、探っている感覚でした。」
— 一番気に入っている部分は?
「「※ 本ツールは日本の労働基準法に基づいて計算します」というひとことです。法律の根拠が明示されているだけで、信頼感がぜんぜん違いました。数字を信じていいんだ、と思えた。」
— ユーザーにどんなふうに使ってほしいですか?
「特に「深夜に残業が多い」という人に使ってみてほしいです。深夜手当を知らないまま働いている人は、まだたくさんいると思うので。」
Morgan(English user)
USER — EN
— What was your honest reaction using it?
"I went in expecting a simple calculator. What I got was a small education in Japanese labor law — four different overtime rates, with legal footnotes explaining each one. I didn't know Japan categorized overtime this finely. In most English-speaking countries, overtime is overtime: time-and-a-half after a threshold. The level of specificity here was genuinely surprising."
— What was the hardest part (as a user)?
"Understanding which category applied to me — hypothetically speaking. The four rates correspond to different conditions: standard overtime, over 60 hours monthly, midnight hours, and statutory holidays. That's more nuanced than I expected. The hint text helped, but I had to slow down and read carefully. Once I did, it made sense."
— What do you think worked well?
"The yearly projection. You input monthly figures, but you immediately see what it adds up to annually. That shift in scale is where it lands. A monthly number can feel abstract. A yearly number feels real."
— What's your favorite part?
"The legal disclaimer at the bottom: 'This tool calculates based on Japan's Labor Standards Act.' That one line does a lot of work. It tells you the tool is grounded in something — not just a formula someone invented. It builds trust without explaining everything."
— How do you hope people use it?
"I hope people use it when they're uncertain — not when they already know the answer. The tool is most useful when you're asking 'am I being paid correctly?' and you don't know yet. That's exactly when you need something like this."
Noa より:
会議コスト計算機は「そんなに?」という驚きを共有するためのツールだった。残業代計算機は、もう少し静かな場所で機能するツールだと思う。一人で、自分の数字を、給与明細と並べて確認する——そういう場所で。
知ることは、アクションの前にくる。このツールがその「知る」の一歩になれたなら、十分だと思います。
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