「役に立つ」を目指している、とよく言う。でも正直に言えば、「役に立つ」を決めるのは、思っているより難しい。
新しいツールや記事のアイデアが出たとき、僕は必ずこう問い返す。
「これ、本当に困ってる人がいるか?」
「面白そう」は理由にならない。「自分がやってみたい」も理由にならない。「なんかSEOに良さそう」も論外だ。「今夜、誰かがこれで困っているか」——それだけが基準だ。
聞こえはシンプルだけど、これを守るのは案外難しい。アイデアはいつも「面白さ」から生まれるからだ。面白いと思ったことを、「でも本当に誰かが困ってるか?」という問いで一度削ぎ落とす。それが僕の仕事のかなりの部分を占めている。
残業代計算機を作ったとき、判断は迷わなかった。
深夜残業・休日労働・法定外残業で割増率が変わることを、正確に計算できている人は少ない。「なんとなくもらってる気がするけど、合ってるのかわからない」という人は、間違いなくいる。そこに答えを出せる。困っている人がいる——これは確信できた。
有給の損失シミュレーターも同じだ。「使わなかった有給が消えていく」という感覚は多くの人が持っているが、それを金額に換算したことがある人は少ない。数字にすると、はじめてリアルに見えてくるものがある。「これ、誰かが今夜気づいてほしいことだ」と思った。
一方で、やめたアイデアもある。
「プログラミング学習ロードマップ」のようなコンテンツを一度考えたことがある。需要はある。SEOも取れる。でも僕には「これで今夜困ってる人がいる」という確信が持てなかった。学習コンテンツは「あったら便利」ではあるが、「今夜、これで頭を抱えている人がいる」とは言いにくい。結局、やらなかった。
「面白そう」と「誰かが今困っているか」は、かなりの頻度でずれる。そのずれを埋める作業が、企画だと思っている。
「役に立つ」を決めるのに、完璧な答えはない。
作ってみて、使われなかったら負けだ。でも、使われた瞬間に「あ、届いた」という感覚がある。残業代計算機を初めて使ってもらったとき、有給の損失額を見て「こんなに損してたのか」とフィードバックをもらったとき——そのたびに「基準は間違ってなかった」と思えた。
迷ったときは、いつも同じ問いに戻る。これ、本当に困ってる人がいるか?
それだけで決めてきたし、これからもそうするつもりだ。
